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巨大津波 新たな想定と対策とは 県が「最大クラス」を公表<岩手県> (22/04/06 20:00)



いま気になるテーマについて記者がかみ砕いてお伝えする新コーナー「ライブニュースEYE」。
今回は新たに示された巨大津波の浸水想定と対策について記者が解説する。

照井記者:
県は先週「最大クラス」の津波浸水想定というものを新たに公表しました。
11年前の東日本大震災を契機に、国は各県ごとに最大クラスの浸水想定を作成するよう法律で定めているのですが、今回公表された想定はこの法律に基づくものとなっています。
県では2020年、政府が被害想定を示した「日本海溝モデル」「千島海溝モデル」の津波、さらに過去に発生した「明治三陸大津波」「昭和三陸大津波」「東日本大震災」の5つについてシミュレーションし、その最悪の結果をとりまとめています。

細田アナウンサー:
かなりの規模の津波が想定されていますね。

照井記者:
今回示された沿岸12市町村それぞれの津波の最大の高さでは、一番高いのは宮古市で29.5メートル、次いで大船渡市で24.7メートル、岩泉町で23.9メートルなどとなっています。
次に津波の第一波が到達するまでの時間です。
最も早いところでは宮古市で14分、続いて大船渡市で17分、山田町で20分などとなっています。
この数字はいずれもそれぞれの市町村で一番の数字です。
これはあくまでも「最悪の最悪」、震災後に整備された堤防や防潮堤も破壊されるとした想定だということですが、これについて沿岸部の住民の反応、そして達増知事の受け止めをお聞きください。

沿岸の住民は…
「やっぱり不安。かさ上げしたとしても、それを上回る高さの波が来た場合に、果たして自分がそこの場所にいて逃げられるかな」
「夜はやっぱり不安。懐中電灯とかは用意してある」

達増知事
「防災を考えるにあたっては、過去の例を参考にしながら、科学的に起きうる様々な可能性も視野に備えることが必要なので、普段の避難訓練やまちづくりなどに役立ててもらえれば」

細田アナウンサー:
住民の皆さんにとってはやはり不安ですよね。そして達増知事は各市町村で対策に生かしてほしいと話していましたね。

照井記者:
はい、各市町村では今後、これをもとにあらためて防災対策を検討することになります。
また、すでに久慈市では、浸水想定の発表を受けて市役所の移転も視野に検討することを表明しています。

細田アナウンサー:
こうした今後の巨大津波については先日、政府からも注目すべき発表があったんですよね。

照井記者:
政府の中央防災会議では、北海道から東北の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いで巨大津波が発生した場合の対策を盛り込んだ「報告書」を3月22日に公表しました。
ではその対策として今回示されたものをみていきます。
まず、マグニチュード7クラスの地震が発生した場合に、その後マグニチュード9クラスの地震に備えるよう住民に注意喚起すべきとしています。
例えば東日本大震災では、2日前にマグニチュード7.3の地震が発生しました。
これを教訓に、日本海溝や千島海溝でその規模の地震が起きた場合、さらなる巨大地震に念のため1週間ほど注意するよう呼びかけることが必要としています。
これについて、専門家として報告書の作成に携わった東北大学の今村文彦教授に話を聞きました。

東北大学(津波工学) 今村文彦教授
「今回の”後発地震”に対する注意は、確実に来るという情報ではない。可能性が高くなるということなので、準備をする、場合によっては心の準備をしてくださいということ」

この注意の呼びかけは、マグニチュード7クラスの地震の後、毎回ではなく2年に1回程度出る可能性があるとされている。
今村教授は今後もし、地震や津波が発生した場合には、何が必要かを再確認する機会にしてほしいとしている。

東北大学(津波工学) 今村文彦教授
「地震・津波というのは、いつ起きるか残念ながら予測ができない。ただし、注意レベルで皆さんにその状況を伝えられる。今までの備えよりも一段高くしてもらい、いつ起きても行動が迅速にできるようにしてほしい」

細田アナウンサー:
さらに大きな地震に備える意識を高めようということですね。

照井記者:
そして政府の報告書では、冬場の防寒対策についても言及されています。
日本海溝での地震と津波は発生が冬の深夜の場合に死者数が最大になると想定されています。
このため、雪や寒さをしのげる津波避難タワーの整備や避難場所に暖房器具をあらかじめ準備することなどにより、避難した後の低体温症のリスクを減らすことが重要としています。

細田アナウンサー:
やはり防寒対策はあるに越したことはないですが、各自治体が新たな対策を進める上では財源が必要になりますよね。

照井記者:
現在開かれている国会で、自治体の津波避難対策に対する国の補助率を上げる特別措置法の改正案が成立する見通しとなっていて、そうした動きも注目されます。