25日、50カ国目が批准し来年1月に発効することが決まった「核兵器禁止条約」。
日本政府は参加しないとしていますが、かつて外務大臣を務めた田中真紀子元衆院議員が声を上げているんです。どうやったら日本が署名できるか。正面から聞いてきました。
田中真紀子(たなか・まきこ)元外務大臣(76)。父は田中角栄元総理。1993年に父の跡を継いで衆院議員に。自民党時代には、科学技術庁長官、外務大臣を。民主党政権では、文部科学大臣も務めました。
しかし任期中、核兵器廃絶について目立った意見は述べていませんでした。
そんな田中真紀子氏は、9月、各国の元首脳らとともに「核兵器禁止条約への参加を求める書簡」を発表しました。アメリカの「核の傘」に入っている韓国やカナダ、ヨーロッパの同盟国の元首脳らも署名しています。
田中「人道主義の観点からいって、これほど恐ろしい兵器はないわけです。国民はいいと思っている人はいなくて、自分のことと受けとめると、もし被災していたら、身内や友人が亡くなっていたら許しがたいと思う。みんなが自分の問題として考えたら批准をしなきゃいけないに決まっている。核実験禁止ですし、核爆弾を作ること自体、禁止しないといけない。核を地球上から消さないといけない。これが私の考え方です」
科学技術庁 長官時代には全国の原発を視察。放射能の危うさを肌で感じ、核兵器を互いに突きつけあう「核抑止」にも危機感を持っていたといいます。
記者「この考えは昔から持っていた?」
田中「基本的にそうです。広島はうちの主人の一族も役人で異動していて、原爆投下の直後にも広島に行ったと聞いていたし、早稲田の大学の時に広島出身の友人もいて(原爆の話も)聞いていた。原爆資料館も行ったことありますし、それはもう子供にも孫子の代にまで行って現実を見なさいという教育をしてきた。
しかし自分が外務大臣中、この問題はあまり話題にならなかった。別の問題、外務省内部の改革ばかりでした」
2017年に国連で採択された核兵器禁止条約。核兵器の開発、保有、威嚇などを禁止する「被爆者の悲願とも言える条約」ですが日本は、一貫して否定的な立場をとっています。
安倍総理(2019年8月6日)「核兵器禁止条約は現実の安全保障の観点を踏まえることなく作成されたために、残念ながら核兵器国が1カ国として参加はしていません」
政府が訴えるのは「橋渡し」です。
安倍総理(2020年8月6日)「立場の異なる国々の“橋渡し”に努め、各国の対話や行動を粘り強く促すことによって・・・」「ゴール(核廃絶)の実現に向けた道筋を追求していく上では立場の異なる国々の“橋渡し”に努めつつ・・・」
田中「日本政府は橋渡し役をやるという言い方をしている。国際社会で。それ自体が極めてナンセンスであいまいだと思っていまして、国家として日本が、この核の問題について、どういう対応をするか。イエスかノーなんですよ、国際社会のこの問題については。いつも橋渡しをして、ではアメリカに対して、『核実験をやめなさい、核保有をやめてくれ』と言えるのかと。おっかながって言えないでしょう。安倍政権以降なおさらそうですけど。
アメリカの核の傘にいるのだから核兵器があってもしょうがないねというのが、自民党の考え方だと思います」
元外務大臣に聞きたいことがありました。大臣が主導したら批准することはできるのでしょうか。
実は外務大臣が主導し、アメリカや外務省の反対を押し切って参加した国際条約があります。1997年に日本が署名した「対人地雷禁止条約」。
小渕外務大臣(当時)「(地雷被害者の救済に)民間の団体が一生懸命協力しているし国もお手伝いしている。そういう中で、日本が一方で、(地雷禁止)条約を認めないということは、私は筋が通らないんじゃないかと思いますが」
記者「アメリカは条約に署名しないと明らかにしています」
小渕外務大臣(当時)「アメリカなりに安全保障に対しての考えがあって、最終的にそういう判断を下されたと思いますが…」
当時の小渕外務大臣が、最初に会見で表明し、反対を押し切って条約への署名を実現させたといいます。
記者「外務大臣が禁止条約を批准しましょうと言ったらできる?」
田中「まず閣内で発言しないといけなくて、一般の方がよく知らないことだが、閣議了解事項といって、閣内でそういう発言をしたいと、外務大臣が言いますね。まず否決されるんですね。内閣がそういう方針じゃないから。ということは自分が辞表をもって、出す覚悟があれば発言できるけど、(辞任するぐらいの)腹がないと、大臣が一人で言ったらボコボコにやられるんじゃないですか。
アメリカ一辺倒だから。アメリカにものを言えない、戦後も言おうともしない」
立ちはだかるのは「外務省」=「国の方針」です。アメリカへの配慮から、安全保障の根幹とも言える「核の傘」に反する方針は、検討すらできないのではと指摘します。
田中「外務官僚の中で(核禁条約の署名を)チラリとでも言ったら更迭されないまでも降格か、どこか出されるでしょうね。非常に本質的な戦後アメリカべったりの状況」
大臣在任中、外務省を「伏魔殿のようなところ」と表現し改革しようとするも、“官僚の激しい抵抗“にあい、わずか9カ月で去ることとなりました。
アメリカに頑なに追随する組織の強さも、肌身に感じたといいます。
記者「トップがかわれば政治主導で外務省をかえていける?」
田中「よほど強力、信念のある、勉強して人望のある支持率も高い総理大臣だとできるでしょうけど。当分ないでしょ」
一方、野党にも手厳しい
田中「政権変わって、民主党に強力な権力を持っている議員がいるんですか?野党で。
やっぱり国民世論が盛り上がっていくしかないんじゃないですか。見ていると、あいまいな問題の先送りで、わかったようなことを言っているが、やる気毛頭ないんだという政治にはうんざりしているし、怒りを感じます」
話は被爆地にも・・・
田中「広島県、長崎県出身の議員は何をやっているのかと。強力に発信しているんですか。こぞって。与野党ともにやっていますか。「批准しろー」ってやってます?」
4年半にわたり、外務大臣を務めた岸田前政調会長は、今月、「核廃絶に関する著書」を発売。日米中で、まずは核の平和利用の話から始めることや、有識者会議に政府も交え、核保有国に働きかけることなどを訴えています。
広島選出 自民党 岸田文雄 前政調会長「核保有国が参加している対話の枠組みを、いかに核兵器禁止条約に結び付けていくのか。さまざまな立場で努力を続けていきたいと思っています」
広島・長崎の自民党議員による議員連盟はあるものの、扱う問題も幅広く、核廃絶に向けた具体的な後押しは、なかなか進みません。
田中「(核兵器禁止条約を)批准して悪いことあるんですか?・・・アメリカににらまれる?なんでにらまれるんですか。国情からいって違うといえば、アメリカは一番 理解するんじゃないですか。原爆の被害者がこれだけいるんだから。日本だけボコボコになっていいとアメリカが言うと思います?同盟国が」
事実上のファーストレディとして父と世界を渡り歩き、外務大臣として、中国やアメリカの閣僚らと関係を築いた経験からでしょうか。繰り返し主張するのは「バランスの良い外交」。
田中「外交努力ですよ、外交が機能していない。バランスのいい外交をすれば、アメリカの出先みたいに鉄砲を向けるからいけないんであって、そうでなければバランスよく中国とも話もできるし、日本に対しての攻撃も減るのでは。
アメリカの属州じゃないんですから、自立したらいい もっといろんな国と話をして。そういう実績を積んでアメリカに言えば、トランプ大統領はどういう人かわからないけれど話はできると思いますよ」
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2020年10月27日放送
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