新型コロナウイルス感染症の新規感染者は減少傾向が続いています。しかしその一方で、新型コロナによる後遺症の相談件数が急増しているといいます。自身も8月にコロナに感染し、その後1カ月以上にわたってせきが出たり倦怠(けんたい)感もあったという、TOKYO MXの森田美礼キャスターが後遺症専門外来を行っている医師を取材し、まとめました。
東京・渋谷区にある新型コロナ後遺症専門外来のヒラハタクリニックによりますと、感染の中心がオミクロン株に移り変わってから700人以上が受診に訪れ、その数は増えているといいます。クリニックの調査でオミクロン株で後遺症と診断された人の内訳を年代別に見てみると、一番多いのが30代で28%、次いで40代の27%、そして20代の21%となっていて、20代から40代という働き盛りの年代が全体の4分の3を占めるなど、多くなっています。症状を割合別で見てみると倦怠感が95.7%、気分の落ち込みが86.9%、そのほか、思考力の低下や頭痛などが続いています(複数回答)。
これまでおよそ5000人の新型コロナの後遺症診断を行ってきたというヒラハタクリニックの平畑光一院長は、後遺症の中で「ブレインフォグ」という症状に警鐘を鳴らします。平畑院長は「頭が回らなくなってしまうのがブレインフォグ。頭が回らなくなってしまい、仕事を失っている人がたくさんいる」と指摘します。
ブレインフォグとは、集中力や記憶力が低下することで「自分が言ったことを覚えていない」「文章の意味が分からない」など、脳に炎症が起きることが原因とされています。平畑院長は「後遺症外来にかからなければならない人の中で3~4割は重症になっている。20代の女性でかつては元気にバリバリ働いていた人が、今はおむつをはいて親に拭いてもらい、自力でご飯が食べられないというような状況に追い込まれていることも決して珍しくない」といいます。
このクリニックで後遺症の診断を受けた、働いている人2781人のうち、仕事を失った人が214人、休職になっている人が1209人もいるということで、およそ半分が後遺症によって仕事に影響が出ていることが分かります。平畑院長は、感染者が高齢でない場合、介護・福祉の支援が受けにくいという現状もあると指摘していて、そうした人たちへの支援を国が考えていく必要もあるだろうと話しています。
仕事を辞めざるを得ない人も出てきている中、治療方法はないのでしょうか。現時点では「これをすれば治る」という確立された治療法はないということですが、平畑院長によりますと上咽頭擦過療法という、薬を付けた棒を鼻の奥に入れることで、後遺症の原因とされる脳と鼻の奥の炎症を緩和し、症状が抑えられる患者もいるということです。この治療方法は保険適用が可能です。
今もなお後遺症に悩み、生活に大きな影響が出ている人もいます。後遺症についてはまだ分かっていないことも多く、こうした現状を見つつ「ウィズコロナ」の生活を考えていく必要があると感じました。