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美しい製品の材料は「海のプラスチックごみ」 ファッション業界も注目する元航海士の活動 三重県鳥羽市 (22/05/12 14:13)



海岸に漂着したプラスチックごみを回収し、新たな製品へと作り変える活動をしている男性がいます。「海のごみは宝」と語る男性が作った製品は、海外の高級ブランドの他、日本のファッション業界からも注目を集めています。

※この企画の30分版がドキュメンタリー番組「日本のチカラ」で放送されます。メ~テレやテレビ朝日では5月14日(土)早朝5時20分~5時50分です。
https://www.minkyo.or.jp/program/nippon_no_chikara/299/

 不思議な模様のランプシェードに、さまざまな色合いのピアス。そして、時計やボールペン。

 これらに使われている材料は、浜辺のごみ。海岸に漂着した、いわゆる「海洋プラスチックごみ」です。

 地形や風向きの影響で、鳥羽市の海岸には伊勢湾を漂うごみが集まりやすくなっています。その量は、年間5000トンにも上ります。

 月に2回ほど、浜辺の清掃活動を行っているグループがいます。

「よし、それで行こう!よーい、スタート!」(間瀬雅介さん)

 グループの中心になっているのが、間瀬雅介さん。間瀬さんは、ごみだったプラスチックを様々な製品に変え、販売する仕事をしています。一緒に活動しているのは、地元の若者や大学生です。

「なんか、宝なんですよ。えっ、違うのみんな?」(間瀬雅介さん)

海のごみを製品に きっかけはフィリピン海で見た光景

 ただ、ごみを集めているだけではありません。変わった色のプラスチックを見つけると大喜び。

「あ!これ、ピンクじゃないですか?」(若者)
「え?お、これレア」(間瀬雅介さん)
「よっしゃー!レア、ゲット!」(若者)
「この色、この色でこの量やばいね。ね、メッチャいいよね。ね、作ったことのある人は分かる」(間瀬雅介さん)

 間瀬さんは元々、航海士の仕事をしていました。そんな間瀬さんが、海のごみを製品にしようと思ったきっかけは何なのでしょうか。

「フィリピン海で、島みたいな大きなごみの塊が浮いていたんですよね。環境に良くないなっていうことはもちろんなんですけど、海の世界から見るごみたちが、なんていうんだろうな、すごく宝に見えたんですよ」(間瀬雅介さん)

 衝撃を受けた間瀬さんは航海士を辞め、ごみになったプラスチックを蘇らせる仕事をしようと決めました。

プラスチックは「面白い」「加工が誰でもできる」

 2020年に、家族で鳥羽へ移住しました。使われていない水産会社の工場を利用した、REMARE(リマーレ)という名前の活動拠点で作業をしています。

 清掃活動で集められたプラスチックは、まず機械で砕かれます。フレーク状になったプラスチックは、間瀬さんにとって貴重な資源。ピザを作るようにプラスチックを並べ、熱を加えてプレスし、シート状に加工します。それを冷まして、固まれば出来上がりです。

「えー、やばっ。ちょっと想像以上に良すぎた」(間瀬雅介さん)

 試しにランプに被せてみると、不思議な色合いに。

「プラスチックは面白いですよ、最高です。今は害になってますけど、いろんなところで必要不可欠だし、加工が誰でもできるのと、色の混ざり具合は面白いと思いますね」(間瀬雅介さん)

製品は海外の高級ブランドの国内店舗でも使用

 間瀬さんは4人家族。鳥羽の市営住宅で暮らしています。

 3年前に結婚し、以前は名古屋に住んでいました。鳥羽に移り住んだのは、妻・亜希恵さんの後押しがあったからです。

Q.間瀬さんの第一印象は?
「第一印象は、変な人だなって感じでした。なんか最初『海賊王になる』って言っていて、すごい自分が知らない世界のことをいっぱい話していたので、不思議でした」(妻 亜希恵さん)

 鳥羽に来た頃は、牡蠣の養殖を手伝って生計を立てていた間瀬さん。その後、補助金や銀行の融資などで設備を整え、1年経ってようやく商品の製造を本格化させることができました。

「テーブル。商談テーブルになります」(間瀬雅介さん)

Q.どこに持って行くのですか?
「東京です」

 間瀬さんのつくる製品は、ファッション業界からも注目を集めています。フランス高級ブランドの国内店舗で、化粧品を置く台として使われています。他にも、東京からアクセサリーブランドのスタッフが訪ねてきました。

「サンプルとしてちょっとね」(間瀬雅介さん)
「おぉ、すごい!」(スタッフ)

 この日は、新しい製品のサンプルを確認する作業が行われていました。

Q.リマーレの魅力は?
「何より、やっぱりリサイクルに取り組んでいることですね。今、やっぱりサスティナビリティを考えることが当たり前の時代になってると思うので、いち早くそういったことをされているのが素晴らしいなと思っています」(サザビーリーグ 瀬川 紗映子さん)

海のごみを使った循環モデルで「地球の7割を遊び場に変えていきたい」  

 さらに、スタッフから新たな提案が。

「これいくらでできますか?」(女性スタッフ)
「そのシートですか?」(間瀬雅介さん)
「うちわにして、ノベルティにしようかなって言ってたんですけど。可愛いなと思って」(女性スタッフ)

 海のごみの可能性が、またひとつ広がりました。

「このひとつの素材の循環モデルを、この鳥羽で確立して、まず日本のいろんな地域で漁業者たち、漁村と一緒にタッグを組んでやっていって、そのモデルを世界へ持っていって、どんどん、地球の7割を遊び場に変えていきたいって思っています」(間瀬雅介さん)

 海を愛し、海のごみを「宝」と呼ぶ間瀬さん。鳥羽の地にやってきて、未来が輝き始めました。

(5月12日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)