「一体誰がこんなストーリーを描くことができるだろう。
東北の地で結成され、類稀れな真摯さとひたむきさで自分たちのパフォーマンスを磨いていった彼女たち。
坂本サトルの比類ない名曲群を武器にはばたこうとした瞬間を襲った震災ーーメジャーデビュー CDのリリースイベントの中止。
震災からの復興をテーマに開催されたその年の東京アイドルフェスティバルでの〈発見〉。
予定されたステージがゲリラ豪雨で中止となったために偶然に訪れたTIF2013スマイルガーデンの大トリの役回りと、そこでの伝説的なパフォーマンス。
アイドル楽曲大賞のメジャー部門とアルバム部門を制し、夢を掴みかけたかに見えた年に、彼女たちに忍び寄る不穏な影。
あまりにもまっすぐで純粋であったがゆえの対立、分裂、そして舞台の上での衝突。
ふた組に別れての再出発、苦悩と苦闘の日々。
ついに訪れたリーダー白戸佳奈の引退。
この最後のチャンスに、それぞれの自責や後悔とを乗り越えようという気持ちが一つになって実現した一夜だけの再結成……
彼女たち5人が目標にしていた日本武道館でのライブはついに実現しなかった。けれども、この夜の彼女たちは、武道館公演にも匹敵する数のアイドルファンの前で、彼女たちに憧れた多くのアイドルの前で、ほとんどワンマンライブに等しいステージを行った。そして、そこで彼女たちは、かつての清潔で気品にみちた、それでいて情熱的でひたむきな、私たちを魅了してやまなかったパフォーマンスをみせてくれた。
もちろん、この再結成には「大人たち」の力が不可欠だった。しかし、それが彼女たちでなかったら、Dorothy Little Happyでなかったら、誰がそのような労苦をあえて背負いこもうと思っただろう。5人のDorothy Little Happyとは、そんな奇跡を可能にする存在だったのだ。
この奇跡の物語は終わった。しかし、新しい物語もすでに始まっている。
ドロシーの歌を引き継ぎながら、声優としての道を歩き出した高橋麻里。
圧倒的なダンス・パフォーマンスと尖鋭な楽曲とが高次元の融合を遂げつつあるcallme。
そして、5人のドロシーのオーラは、坂本サトルの新たな名曲たちとともにパクスプエラが受け継いでゆくだろう。
この物語を体験することができた私たちは幸せだった。
東北の奇跡ーーDorothy Little Happyのストーリー。」