恋愛ドラマ:上白石萌音、浜辺美波、森七菜… 恋愛ドラマに“ニューウエーブ”到来のワケ
2020年は数多くの恋愛ドラマが放送され、視聴者をキュンキュンさせた1年だった。中でも、「恋はつづくよどこまでも(恋つづ)」(TBS系)の上白石萌音さん、「私たちはどうかしている(わたどう)」(日本テレビ系)の浜辺美波さん、「この恋あたためますか(恋あた)」(TBS系)の森七菜さんと、20歳前後の新進気鋭の女優が主演を務めた作品が、SNSなどで高い支持を集めた。ドラマ界に新たな波を呼んだ3作品を振り返りつつ、若手起用の理由を探っていきたい。
◇上白石萌音&佐藤健にキュンキュン
今年1~3月に放送された「恋つづ」は、円城寺マキさんの同名マンガ(小学館)が原作。新人看護師の七瀬(上白石さん)と、毒舌ばかり吐く超ドSなドクター・天堂(佐藤健さん)との恋模様をユニークに描いた。第4話の天堂が七瀬に突然キスをするシーンでは、SNSで「佐藤健の破壊力が凄(すさ)まじい」「やばいしか出てこない」などと、悶絶(もんぜつ)するファンが続出。その後も、天堂の“伝説のバックハグ”、七瀬が“お色気作戦”を仕掛ける“クリーム祭り”、天堂の“キッチンキス”といった名シーンが登場し話題となったほか、ドラマをリピート再生する「追いつづ」という言葉が誕生した。
優れたテレビドラマを表彰する「東京ドラマアウォード2020」で連続ドラマ部門の優秀賞と主題歌賞に選ばれたほか、ドS天堂を見事な演技で表現し、視聴者の心をわしづかみにした佐藤さんが助演男優賞を受賞し、3冠に輝いた。さらに、ヤフーの検索サービスで前年に比べて最も検索数が上昇した“今年の顔”を表彰する「Yahoo!検索大賞2020」では佐藤さんが大賞と俳優部門賞をダブル受賞した。どこか品の良い雰囲気と、天真らんまんな笑顔で新米看護師の七瀬を体現した上白石さんは、「恋つづ」を機に、バラエティー番組のMCに初挑戦するなど活躍の場を広げている。
◇浜辺美波は横浜流星と“美しいキスシーン” 劇中で大人の女性へと変貌も
浜辺さんと俳優の横浜流星さんがダブル主演を務めた「わたどう」は、安藤なつみさんの同名マンガ(講談社)の実写化作品として今年8~9月に放送。浜辺さん演じる和菓子職人の七桜と、横浜さん演じる創業400年の老舗和菓子屋「光月庵」のクールな跡取り息子、椿が、15年前に起こった「光月庵」主人の殺人事件を巡り、運命に翻弄(ほんろう)されながらも強くひかれ合う“ラブミステリー”だった。
浜辺さんと横浜さんのキスシーンが描かれて話題となった初回に続いて、第2話にはラブシーンも。SNSでは「美しすぎ」「わたどうの破壊力」「流星くんと美波ちゃんの色気やばい!」「色気すごすぎて直視できない!」と視聴者を興奮させた。物語の中盤では、物語の3年後に舞台を移し、新米和菓子職人からライバル店の美しき女店主へと変貌した七桜が登場。したたかな大人の女性となりながらも、椿への思いを秘めた七桜を好演した。
◇中村倫也&仲野太賀との三角関係に揺れる女性を可愛く表現した森七菜
コンビニスイーツ開発をめぐる奮闘を横糸に、21歳の井上樹木(森さん)と、樹木がバイトしているコンビニチェーンの社長・浅羽拓実(中村倫也さん)との恋模様をつづったのが10月期に放送された「恋あた」だ。ツイッターでは、ハッシュタグ「#恋あた」が何度も世界トレンド1位になるなど放送当初から話題を呼んだ。
活発で明るい樹木を好演した森さんは、2019年に放送され注目を集めた連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)に出演。今年は、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」のほか、映画「ラストレター」「青くて痛くて脆い」に出演。「第12回TAMA映画賞」の最優秀新進女優賞、「第42回ヨコハマ映画祭」の最優秀新人賞を受賞と評価を受けているが、地上波連ドラの主演、しかも数多くのヒット作を送り出してきたTBS系“火10枠”の主演に大抜てきされたことには、テレビ業界のみならずドラマファンも驚いたことだろう。しかし、ドラマがスタートすると、浅羽と新谷(仲野太賀さん)の間で揺れ動く樹木を、持ち前の可愛さとフレッシュな演技で表現し、SNSでは「森ちゃんが可愛いすぎる」「最高に可愛い」と話題になった。
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上白石さん、浜辺さん、森さんと、20歳前後の若手女優が、ドラマのメインストリートともいえる地上波プライム帯の連ドラ初主演を飾った2020年。若手女優が連ドラの主演を飾る理由には、ティーン層やF1層(20~34歳の女性)といった若年層の視聴者を取り込みたいという意図があるだろう。事実、この3作は、SNSと極めて親和性が高く、ツイッターで世界トレンドに何度もランクインするなど、“ニューウエーブ”を起こした。
また、2020年は、これまで重視されてきた世帯視聴率から、より実態に近いとされる個人視聴率へのシフトチェンジが図られた年でもあった。YouTubeなどの普及に伴い、情報への感度や購買力が高いとされる若年層の“テレビ離れ”が叫ばれる中、同年代の女優を主人公に据えることは、クライアント対策の意味からもチャレンジする必要があった。そして、今回のヒットで結果もついてきたといえる。
上白石さんは、2021年1月から「恋つづ」と同枠で放送される「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系、火曜午後10時)で再び主演を務め、浜辺さんも「わたどう」と同じ枠で同年1月から放送される、菅野美穂さん主演の「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ系、水曜午後10時)に出演が決まっている。スケジュール的に、「恋つづ」「わたどう」の高評価を直接的に受けたものだとは言いづらいが、ともに同じ枠での2度目の出演で、ドラマ“おなじみの顔”に仲間入りしたといえる。
女優デビューからまだ3年と、前述の2人よりキャリアの浅い森さんも、まだ「恋あた」が終わったばかりということもあってか、公表されている作品は少ないものの、近々では、SixTONESの松村北斗さんとダブル主演の映画「ライアー×ライアー」(耶雲哉治監督)が2021年2月に公開と、さらなる活躍が見込まれる。
2020年は若い才能がテレビをにぎわせ、そして結果を出した年となった。一方、12月まで放送された、木村佳乃さん主演「恋する母たち」(TBS系)のような“大人向け”の作品も大ブレークしており、複雑な状況となっている。2021年はどういった流れになるのか注意深く見守りたい。