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体温計や休憩室で感染の可能性 増える院内感染(20/04/02)

新型コロナウイルスの感染拡大は、病院という医療の最前線まで広がっています。2日、東京都で新たに感染がわかった97人のうち、21人が台東区の永寿総合病院の関係者で、13人は永寿総合病院から患者が転院した新宿区の慶應義塾大学病院の関係者だといいます。

神奈川県の横浜市立市民病院では、20代の女性研修医が感染していたことがわかりました。この病院は、クルーズ船で感染が拡大した時、その患者の治療を担った感染症指定医療機関です。女性研修医は、先月26日に鼻水の症状が出て、28日以降は味やにおいがわからなくなる症状が出たため、今月1日に検査し、陽性が判明しました。濃厚接触した指導医など49人は自宅待機しているといいます。女性研修医は、感染症病棟では勤務しておらず、横浜市は「感染症患者の診療は一切やっていませんので、院内感染の可能性は、ほとんどないのではないか」としています。

北九州市の新小文字病院では、医療スタッフ17人の感染が確認され、外来や新規の入院診療が当面停止となりました。甲斐秀信院長は「元来、新型コロナは受け入れず、救急医療、急性期医療に専念する方針で、『まさか』というのが正直な感想でした」とコメントを発表しました。

大分市の大分医療センターでは、最初の感染者が見つかった後、医師や看護師など次々と感染が発覚。大分医療センターから転院した患者も、のちに相次いで陽性と判明するなど、関連した感染者は24人となっています。この病院に厚生労働省から派遣された感染症の専門家チーム『クラスター対策班』は、“休憩室”が感染を広げた可能性があると指摘していて、大分県は「我々も『あっ』って気付かされた部分です。医療現場では、医療スタッフも患者さんもマスクっていうのがかなり定着してきましたが、一つの落とし穴が休憩室です。休憩室で、例えばスタッフが密集した状態でご飯食べたり、少しお話をしたりするというのが、医療機関において意外な感染リスクでした。この点は新しい重要な留意点、気を付けるべきポイントではないかなと考えています」と話しました。大分医療センターは、入院患者や医療スタッフなど600人以上にPCR検査を実施。全員陰性でしたが、最後に出た感染者の2週間の経過を見るために、6日までの外来診療をストップしています。

これまでに新型コロナウイルス患者を20人以上受け入れてきた、大阪府の感染症指定医療機関・りんくう総合医療センターの倭正也感染症センター長は「数の面から言うと、本当にかなりいっぱいいっぱい。ICU(集中治療室)を一部閉鎖して、新型コロナ用に使っています。そこに救命センターのドクター、看護師、スタッフのマンパワーを注いでいます。最初は感染症センターの中で診ていましたが、それだけじゃマンパワーと患者の数がいっぱいいっぱいで、オーバーしています」と増え続ける患者に危機感を募らせています。また、「マスクとか防護服も枯渇してきています。経済のことを考えて、緊急事態宣言とか、ロックダウンを出さないという道を日本が選ぶのであれば、それ相応の対応をするやり方を探っていかないといけません。今のままだと、医療者の負担がかかり、そこに防護服がなければ、医療者の二次感染は今後さらに増えます」と警鐘を鳴らします。

感染症対策が専門の順天堂大学・堀賢教授は、院内感染が起きる要因について『濃厚接触』や『飛沫による感染』『接触感染』の可能性があるとしたうえで、一般的に考えられるケースとして以下の4点を挙げます。

(1)感染した医療スタッフとの接触
(2)感染した面会者との接触
(3)患者同士の会話
(4)汚染した物品や環境のシェア

堀教授は(1)~(3)について「新型コロナウイルスは症状がはっきり出ない人が多い。そのため、本人が気付かないうちに起きている可能性があります」と説明。(4)については「新型コロナウイルスはしつこい。環境中に残っていても、金属だと2日、プラスチックだと3日そのうえで生きています。インフルエンザだと半日くらいでウイルスの活性がなくなっていきますが、新型コロナウイルスは2日前に使った体温計を使いまわすだけで感染してしまいます。そういう意味では、環境や物品の消毒を徹底しないと難しいという特徴があります」と話しました。さらに「院内感染が起きて、患者が増加すると、隔離するための部屋が不足し、患者を転院させる必要が出てきます。また、医療スタッフが感染すると、人手が不足し、ベッドはあるがケアをするスタッフがいない状態となり、患者の転院が必要となります。こうして他の病院が切迫し、あふれてしまうと医療崩壊の危険が出てくる」と指摘しています。
[テレ朝news]